いつも『FOUR SEASONS ~滴や 装い拓き~』の【和次元・滴や】コレクションを ご覧いただき 誠にありがとうございます。

今回の春コレクションは、【 浮世しのぎ 】レーベルを特集しています。 現在、イギリスの国立博物館であるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(略称V&A)にて 展示中の袴式コーディネートは、昨年に春コレクションとして発表し、永年収蔵されたものです。 この袴式コーディネートの中から、袴と小袖のみを、 V&A Collection Memorial Model として、例外的に数量限定で再生産しました。

しかし、春コレクションの【 浮世しのぎ 】レーベルは、〈紙子(かみこ)〉などの希少な素材を使っているアイテムばかりなので、同じく V&A博物館に永年収蔵された「紙子のローブ」は再生産不可能でした。

そこで、今回も【 浮世しのぎ 】レーベルを中心に、前回の「紙子のローブ」の後継モデルまでラインナップした、力強い質感・贅沢な手仕事・じわりと効いてくる渋さが特徴の コレクションになっております。

【 浮世しのぎ 】とは、和紙そのものを衣服とした〈紙子〉を主軸に、紙布、本革、麻、絹 等に繰り返し手を加えたものなど、こだわりの素材から仕立てられたアイテムを揃えたレーベルです。 2016年に立ち上げた、このレーベルは、通常展開している【 したたり 】や【 士揃ヱ 】に比べ、とても希少価値が高く 使い込むことで味わいが増してくる素材を使っていることが特徴です。 力強い素材感はそのままに、大胆かつ贅沢な加工を施し、長く着ていただける飽きのこない渋めのデザインに仕上げています。

【 浮世しのぎ 】のアイテムには、1点ずつ細かな加工が何回も入りますので、すべて数量限定のアイテムです。 手仕事のため、柄の出方など細部で 撮影商品とは異なるアイテムも多いのです。 また、早い段階で “sold out” 表示になるケースが増えるかと思いますが、その点は ご容赦ください。 実物に触れていただけるのが、楽しみな品々ばかり揃いました。

各々の商品説明に入る前に、【 浮世しのぎ 】独自の素材である〈紙子〉について、先に触れておきます。 〈紙子〉とは、強度を増す加工を施した和紙で作られた衣類です。和紙というと、ペーパーと英訳されるでしょうが、その風合いは むしろ樹皮に近く、ファイバーとの表記が相応しいことと思います。

その歴史は古く、和紙が大量に普及し、紙本来の書くという目的以外に、衣料として着用される様になったのは、平安中期と言われ、源平合戦の頃には防寒着として用いられていたようです。 絹より安価なことで庶民の衣服と想像しがちですが、むしろ風流な印象が愛され、丈夫で軽く、持ち運びが簡単なため、特に武士や俳人等に好まれてきました。

2014年、和紙がユネスコの無形文化遺産に登録されました。世界に認められるのは、めでたいことなのですが、実のところ、これは紙子の素材となる和紙の製法すら途絶えようとしているという警鐘に他なりません。

〈紙子〉は、その原材料である和紙に、40年の経験を積んだ島田康子女史が、煮る、コンニャク糊の塗布、藍・ベンガラ・黄土・松煙・柿渋などによる刷毛染め、揉み込み等を繰り返して、強度と防水性を高めていきます。 そうすることで、およそ紙とは思えない丈夫な〈紙子〉の原紙が出来上がるのです。

その島田女史が作る〈紙子〉の原紙から、芯を貼る等の仕立てのための処理をしつつ、丈夫な縫製を行い、現代の〈紙子〉を生み出す仕事を 滴や が託されています。 和紙にこだわり過ぎて着づらい物とならぬ様、異素材との組み合わせにも工夫をします。それが【 浮世しのぎ 】なのです。

〈紙子〉は、断然軽く、雨には強く、濡れても軽く拭けば良いのです。着れば着るほど味わいが増し、たとえ破れても、和紙を重ね貼ることで修理が可能です。 布繊維の衣類と同様に捉えず、まったく別物の衣類として扱うことで、〈紙子〉は軽くて暖かく、メンテナンスも簡単な面白味のあるものだと気付くことでしょう。

この春コレクションが、より特別で、より自分らしい《HAKAMA-SHIKI/袴式和服》を発見するきっかけとなれば嬉しい限りです。

和次元 滴や    装造師 宗裕