2016AUTUMNCOLLECTION

妖しく底光りした黒が印象的な小袖は、しなやかで通気性の良い斜子織にチンツ加工を施した素材。袖口と掛け衿の先に見せた裏地のエンジも表の黒をより引き立てている。
袴の色は、ほぼ漆黒に近いが、裏は赤く 細いストライプが走っている。クオリティの高いメリノウールを使ったメルトン仕上げの上質な毛織物で、表れるシルエットも美しい。裏使いで仕立てた紐の赤が効いている。

ワインレッドの小袖は、バラ柄の織紋様である。いつか作りたいと思っていたデッドストックの生地で、材質はテトロンウール。テトロンとは、東レと帝人が日本にポリエステル糸を導入した時に生まれた由緒正しきポリエステルだが、ウールとの混紡は ハリ・コシが強く、懐かしさを感じる風合いだ。レトロな雰囲気と角度によって変化する赤みの強さに惹きつけられる。
シルバーグレーの袴は、よく見ると細密なヘリンボンに織られている。素材はウール×シルクで、ロロ・ピアーナ社製。気高さがにじむ様な品の良い光沢といい、しなやかに滑る肌触りといい、非の打ちどころがない。

渋めの配色と力強い織紋様が、秋らしさを感じさせてくれる小袖だ。織り柄でありながらも男らしく、男らしいながらも、素材はシルク混でしなやか。袖口に見える袖裏もコゲ茶で抑えが効いている。
銅のように鈍く輝くのは、デニムの袴だ。デニムに箔押しのようなプリント加工を施している。デニムの力強いハリ・コシが迫力あるシルエットを作り、金属的な光沢も相まってヒダのコントラストは、まるで刃のようである。

シャンパンゴールドの輝きが印象的な箔プリントの小袖だが、実は裏地も特徴的である。家紋を散らした模様の裏地で、茶と黒の紋織である。その裏地が袖口と掛け衿の先に、ちらりと見えるのだ。
上品なベージュの袴はハリのある生地で、よく見ると固く密に織られた細かい横ウネが並んで美しい。形状記憶素材で、表面を手で軽く伸ばすだけで、シワが気にならなくなるのも嬉しい。

黒と銀の片身合わせの小袖は、同じ生地の裏表を両方使い仕立てている。銀色の輝きと黒光りで左右を真２つに分け合う背中は潔い。素材の特性である裏表両方の美しさを活かすため、袖口加工をした単仕立てで仕上げている。
無彩色のまだらな模様をコーティングした怪しい光沢のある袴は、ご要望に応えて復刻した大好評の逸品。漆の様に上品な表情の上、しなやかで扱いやすい。美しいシルエットが出ることも人気の理由になっている。

妖しさ渦巻く線描柄の小袖は、〈10th anniversary Limited Collection〉Op.5-1の配色違いで、柄と背景を白黒反転させている。極細ラインやカスレまで表現された細密なプリント技術でのシンプルな線描のデザインには、百の力で十の仕事に臨むような心意気を感じる。
袴は、今回のコレクションNo.FSAC16-04の配色違い、黒。しっかりと細かな横ウネが織られたハリのある形状記憶素材で、表面を手で軽く伸ばすことで シワも気にならない。

見る角度により、色が変わって見える３Ｄ素材を使った風土ローブ。白地の上を高さのある縦ウネがびっしりと走る立体的な素材なのだ。そのウネの左右が黒と茶の違う色なので、角度により見える色が違う訳だ。 独特な風土ローブの形と立体的な素材が醸し出す不可思議な雰囲気は、もはや和装という範囲は超えている。近未来的な衣服として、着る者に未知の感覚を呼び覚ましてくれるだろう。
この風土ローブは、素材的では表面のウネがより高くなり、縫製面では袷（総裏）仕立てにするなど、大好評だった〈10th anniversary Limited Collection〉Op.8-1を、よりアグレッシブにデザインしたものである。

こちらも立体的な３D素材を使った風土ローブだが、生地表面にハニカム構造が形成されている。正六角形の枠を隙間なく並べた構造で、いわゆる蜂の巣の形状である。 大自然の原理は、軽くて強度があり、また音や衝撃を吸収できて断熱効果もあるということで、ミツバチたちも知らないところで進化を遂げ、現在では、飛行機の翼、新幹線などにも利用されている。
その原理をファッションとして転用したのが この風土ローブなのだが、正面からは白、左右からは黒と赤に見える正六角形の集合体は、モアレを発生させるデジタルっぽい表情が楽しい。 白と黒と赤により遠目にはピンクにも映るが、密集した六角形の表情は硬く力強いので、甘い色目の割に緩さを感じさせない。裏地の色はエンジである。

錆びた銅のような配色でムラ染めされたクラッシュベロアの風土ローブ。起毛した柔らかな風合い、硬さを連想させる沈んで落ち着いた配色、光沢のあるゴージャスな素材感、そして個性際立つ風土ローブ特有のデザイン。
そのどれもがアンバランスで、妖しさを際立ている。さらに、すべての風土ローブに言えることだが、袖口のボタンの開閉やフードの活用により印象が大きく変わることも、このアイテムを着るときの楽しみなのである。

変幻自在な着こなしができる新たな羽織として、特許出願中でもある和慈羽袖。更なる挑戦として発表するのが、ニット素材の和慈羽袖だ。衣類の素材には織物と編み物があるが、和服の世界では編み物のアイテムは ほぼ存在しない。
ニットのレースを素材とした和服の珍しさは言うまでもないが、和慈羽袖のデザインとニット素材との相性の良さは予想を超えていた。柔らかな風合いに加え、黒の中に広がるエンジの網目模様は美しい。レースの網目からも透かして見える裏地もエンジだ。素材の伸縮性を考え、衿のみ毛織物で仕立てている。

和慈羽袖の身体を包み込むデザインを より引き立てるため、素朴な風合いの織物を使っている。縞の織物には、オレンジや黄色のフシがあり、柔らかな手触りだ。裏もオレンジの綿素材を合わせて、全体的に柔らかくまとめている。
和慈羽袖の着こなしはバラエティーに富み、このように片袖を捲り上げるように巻いてしまうと、同じアイテムとは思えないほどイメージが変わって面白い。

ウール×モヘアの心地よい手触りが特徴のマント。銀ラメの糸とふんわりと巻き毛のように上品な光沢の黒い糸が、全体には濃いチャコールグレーのベースの中を、横段に織り込まれている。マントの男らしいシルエットながら、起毛した柔らかな風合いで、女性ウケも良さそうだ。着心地も軽く、見た目にも重くなり過ぎないので、比較的カジュアルに着こなせるだろう。